対談したのは、この二人

ほり
デザイントースト代表・クリエイティブディレクター
都内制作会社に6年程勤務後、オーストラリアで独立、シンガポールのプロジェクト参画を経て2020年デザインチーム立ち上げ、デザイン・ディレクション等幅広く行う

キャシ
ロンドン在住・プロダクトUIデザイナー
ロンドン拠点でon株式会社のビジュアルデザイナーとして、業務システム・アプリUIデザイン、やFigmaルール策定、勉強会まで幅広く担当
大学の入学直前に、カフェでデザインの本を見て「デザイナーになりたい!」

こんにちは!
さっそくですが、キャシさんの今までのご経歴をよかったら簡単に教えて下さい。

よろしくお願いいたします、キャシです!
まず、米アニメーションスタジオでグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートさせました。
その後は日本に帰国しデザインはせず10年のブランクを経て、2016年にオンライン等でデザインコースを学んで、英系UX戦略デザインオフィスのUIデザイナーへ転身しました。
現在は、ロンドンを拠点にフルリモートで日系企業のビジュアルデザイナーとして業務システム・アプリUIデザイン、アートディレクションを幅広く担当しています。

そもそもは、何がきっかけで渡米されたんですか?

元々は、海洋生物学を勉強するつもりでシアトルに行ったんです。
でも、入学手続きをするその日にに、ふらっと時間つぶしのために寄ったカフェで見たグラフィックデザインの本を見て「デザイナーになりたい!」と思っちゃったんです。出会ってしまいました(笑)
その足で、もう転校手続きしにいっちゃって…


ええええ!!周囲に反対されませんでした?

もう係員の人から凄いびっくりされちゃって。私が行きたいって言ったグラフィックデザインのコースは2年制で、私が入ろうとしてたのって海洋生物学で結構有名な4年制の大学だったんですよね。
係員の人に「普通、逆!」って言われました。すごい説得されたんですけど、でも意志は固くて、「もう私はここにしか行かないから」って(笑)

決断力がすごいですね!(笑)
カウンセリングでもデザイナー転身を悩んで踏み出せない方が結構いるのですが「美大卒じゃないし、他業界からの転職なんて無理かな」と自信のない方もいるんですが、どう思いますか?

なれますよ!別業界の経験も役に立つときが来ますよ、絶対。例えばヘルステックのインハウスのデザイナーとかになったら一発合格ですよ、きっと。
やってみないとわかんないじゃないですか!別に失敗だなって思ったらやめりゃいいんですよ、そこで人生終わるわけじゃあるまいし、と(笑)
デザイナーだけじゃなくって色んな職業ありますから、やってみて向いてないなって思ったら辞めればいいんですよね。
日本のデザイナーの海外就職って、可能?

私はオーストラリアで勤務し、デジタルノマドで海外にいた期間が長いことから、周りに海外に興味のある方も多いのですが
ズバリ、海外でデザイナーとして現地就職するって可能なんでしょうか?

もちろんです!!!!
まず、海外に行きたいんだったら早く動くこと。どの国もビザのルールがどんどん厳しくなってきてるんですよね。本当に、すぐ来た方がいいと思います。
だけど今は仮に、私が日本にいてイギリスにいきなりデザイナー就職と思ったらやはり難しいんです。じゃあどうするかといったら、世界展開しているデザインオフィス・エージェンシーの日本拠点に入って、内部転勤を目指すと思います。成功するまでずっとチャレンジしましょう。
一人ロンドンで知ってるデザイナーさんがいて、その方が、まさにそのコースでロンドンに引っ越してきてきました。
海外と日本の違いは、プレゼンテーション

キャシさん自身はプレゼンはお得意ですか?

いいえ。私、実はつい最近まで大嫌いだったんですよ、プレゼン。やりたくないってずっと言っていて(笑)
ロンドンでUIデザイナーになる前、現地で別の仕事でフルタイムで働きながら2年半ほど学んでいました。当時教えてくれていた先生に「今のデザイン業界はプレゼンできなかったら、もう就職ないよ!」って言われたんですよ。
「プレゼンできないとどこも取ってくれない。絶対」って、説得されたんです。それでめちゃくちゃ練習しました。

日本では「プレゼンするのはデザイナーではなくディレクターや特別な人」と思われていますが、欧米圏は当たり前みたいですよね。
アメリカから帰国してから、UIデザイナーになるまでの経緯も聞いていいですか?

最初に私がグラフィックデザイナーになったのは1994年でした。
帰国し、デザインをしていなかったブランクが10年ほどあります。日本でデザイナーにならなかったのはなぜかと言うと、帰国時の日本っていうのが全部アナログで、私が勉強してきたことを使える場所がなかったんです。
デザインから長い間離れていた間は、日本やイギリスで働いていました。
リサーチャー、スタバのバリスタ、秘書、歯医者受付等色々していました。めちゃくちゃですよね(笑)当時、知り合いのウェブサイト等を作ってはいましたが仕事としてはやっていませんでした。
2016年からまたデザインの勉強を再開し、
オンラインコースでフロントエンドのディベロップメント、UXデザインのオンラインコース、UIデザインをロンドンのブートキャンプで学びました。トータル2年半ほど学んだ後、2018年にUIデザイナーとして正式に仕事を始めました。

海外のデザインと日本のデザインはどう違うと感じますか?

海外はシンプル、Less is moreの考え方で、キャッチコピーやピッチを1つか2つ持ってきて、余白をたっぷり取る傾向があります。
日本は町並みやスーパーのチラシ、ゲーセンなどがそのままデジタルになったような、詰め込めるだけ詰め込んであるデザインが多い印象がありますね。
ちなみに、日本だけで通じるデザイン用語や職種が多くて、結構な頻度で困っています…
キャシさんの作品


面談はどういうことを見られるの?

面談の流れは、どのような感じなのでしょうか?

通常、私の経験からすると、最低でも2ステージ。一般的にどの会社も4ステージくらいあります。
・第1ステージは、
リクルーターから15分から20分ぐらい電話でスクリーニング。
・第2ステージは、
面談する予定の会社の採用担当とZoom(現状はコロナ禍のため)
・第3ステージは、
多くの場合は、この辺りでデザインチャレンジというタスクを出されます。
・第4ステージは、
自分の行ったデザインチャレンジのプレゼンをしなきゃいけないんですね。併せて、過去の自分がやってきたお仕事のプレゼンをする時もあります。
ウォークスルーとも言って、ポートフォリオでは、自分の推したいプロジェクトを1-2個ピックアップして、それをプレゼンするのもよくありますね。
もう面接でもプレゼンなんですよ。だから、「プレゼンは大事」と説得してくれた当時のUIデザイナーの先生には本当に感謝ですよ(笑)


今までの面談の経験上、「これは受けが良かったな」というものはありましたか?

このプロジェクトっていうよりも、「御社に合うプロジェクトだと思ってチョイスしました」って言い方をすると、すごい喜ばれますね。
日本でも海外でもそうだと思いますが、面接をする企業をしっかりリサーチしてる分かるようなプレゼンをすると受けがいい。
お話しした人が結構口をそろえておっしゃってたのが、そのリサーチをしてこない人や、どこの会社にでも当てはまるようなことしか言わない人が結構多いということらしいんです。
向こうの立場になると、準備や時間をかけて準備してきてくれた人の方が、特別には思えますよね。

「デザインのプレゼンや、フリーランスの営業も同じですね!」
英語力は、どのくらい必要か?

就職するにあたり、英語力は大体どのくらいあればいいでしょうか?

高ければ高いほどいいです。
まず北米に行きたいならTOEFL、UK・欧州・オセアニア・インド・中近東を目指すならIELTSを受験すること。
具体的な最低スコアはTOEFL94-100、IELTS7.0を取れれば何とかなります。またプレゼンテーションスキル、面接特有の英語も必要です。
日本のデザイナーに足りないもの

では、日本のデザイナーが海外で働くにあたり、補った方がいいところはあると思いますか?

自分で考え、伝える力でしょうか。
例えば Twitter をやってても思うんですが、ある程度キャリアを重ねてらっしゃるクリエイターさんから「こういうふうにしたほうがいいよ」とその人の意見として言われたとしたら、100%疑いもなく「勉強になります」って言って受けてしまう。
少し従順すぎるというか。
素直なのは悪いことではないのですが、自分は一人しかいないし1日は24時間しかないから、自分がなりたい目標のために必要なことかどうかっていうのを、ちゃんと取捨選択した方がいいのではないかな、と思います。

上下関係は先輩後輩だけでなく、デザイナー対顧客でも顕著ですね。

そうですね。イギリスでは意見を伝えないと、逆に評価が下がりますよ。「意見ないの?この人は」って。
例えば、デザイナーは説明なしにデザインだけを見せたり、顧客が「こうしてほしい」と修正リクエストをしたものに対し、デザイナーが自分の意見を伝えずに顧客に言われた通り、黙って直すのも疑問です。
自身のデザインによって伝えたいことや目的は「私はこう思うから、こうした方がいいと思うんです」と顧客に伝えることが必要だと思います。

同感です。自分らしく、良い顧客と対等な関係を築くために 日本であっても、全てのデザイナーが自分の意見と説明とともに デザインを出すべきですね。
結果、自分の価値を上げることにも繋がりますから。

キャシさんの行動力に勇気づけられる人は多いと思います。やってみてダメならやめたらいい、まず行動を起こそう!
でも、チャンスの波は一瞬で過ぎ去るので、波をつかむために準備をすること。準備には時間がかかるのでとにかく早く動いた方がいいと、私も経験から思います!
キャシさん、今日は本当にありがとうございました!